「メガネをかけても弦が重なって見える」「フレットのポジションがぼやけて、正確に押さえづらい」——50代でギターを再開した方の中には、こんな悩みを抱えている方も少なくありません。
ギター教室に通う生徒さんの声として、「眼のピントが合わないこと」がギター練習で困ることの一つとして挙げられています。老眼が進み、メガネをかけても弦が重なって見えるので正確に押さえづらい、という体験談は、決して珍しいものではありません。
この記事では、50代のギター再開者向けに、老眼による見えにくさへの対処法を解説します。
■ 老眼とは何か(一般的な仕組み)
老眼は、加齢によって目のピント調節能力が衰える現象で、病気ではなく、誰にでも起こりうる自然な老化現象です。一般的に40歳前後から自覚症状が表れ始めるとされています。
ものを見る働きは、ピント調節を担う「毛様体筋」と、レンズの役目をする「水晶体」によって行われています。加齢に伴い水晶体の弾力が減って硬くなると、近くのものが見えにくく感じるようになります。これが老眼の仕組みです。
なお、目の不調が続く場合や気になる症状がある場合は、自己判断せず、必ず眼科を受診することをおすすめします。
■ ギター演奏中に老眼が引き起こす具体的な困りごと
▼ 弦とフレットの位置関係がぼやける
指板上の細かい弦の間隔や、フレットの位置関係が見えにくくなり、正確な押弦がしづらくなります。
▼ TAB譜やコード表の文字が読みにくい
楽譜やコード表の細かい文字、数字が見えにくくなることも、練習の妨げになることがあります。
▼ 通常のメガネでは対応しきれないことがある
普段使っているメガネをかけても、ギターを構えたときの距離(顔から指板までの距離)にはピントが合わないことがあります。これは、老眼鏡の多くが「読書」など、決まった近距離を想定して作られているためです。
■ 「指の感覚で覚える」というアドバイスの限界
見えにくさへの対応として、「指の感覚で覚えるように」というアドバイスを受けることもあります。実際、感覚だけで演奏できるようになることは、上達の一つの目標でもあります(過去記事「目を閉じて弾く練習法」も参考にしてください)。
ただし、これは急に習得できるものではなく、練習を重ねる中で少しずつ育っていく感覚です。今、見えにくさを感じている状況で、視覚的なサポートを併用することは、決して悪いことではありません。
■ ギター専用の「距離」に合わせたメガネという選択肢
一般的な老眼鏡は、主に手に持った本や新聞などを読むための、比較的近い距離に合わせて作られています。一方、ギターを構えたときの、顔から指板までの距離は、読書時とは異なることが多いはずです。
資格試験の勉強のために「机に置いた教材との距離」に特化したメガネを作るという工夫を実践している人もいます。同じ発想で、実際にギターを構えた状態での「顔から指板までの距離」を、眼鏡店で正確に測ってもらい、その距離に特化したメガネを作るという方法が考えられます。
▼ 距離を測る際のポイント
ギターを構えた状態で、目から指板までの距離をメジャーで測ります。首を曲げずに、普段の演奏姿勢のまま測定することがポイントです。この距離を眼鏡店に伝えることで、より自分の演奏スタイルに合ったメガネを作れる可能性があります。
■ 遠近両用・中近両用メガネという選択肢
すでに近視用のメガネを使っている場合、遠くを見る用のメガネと、近くを見る用の老眼鏡を使い分ける必要が出てきます。このかけ替えの手間を省きたい場合は、1つのレンズに複数の度数が入った遠近両用・中近両用メガネも選択肢の一つです。
▼ 中近両用レンズという選択肢
中近両用レンズは、手元から約4メートルまでの範囲にピントを合わせやすいタイプです。楽譜(近い距離)とアンプやスコアスタンド(少し離れた距離)の両方を見る場面が多い方には、こうしたタイプが合う可能性があります。
▼ 慣れるまで時間がかかることもある
遠近両用・中近両用メガネは、レンズの構造上、視界の周辺部にゆがみを感じることがあり、慣れるまでに一定の期間を要する場合があります。老眼がそれほど進行していない段階から使い始めると、視線の使い方にスムーズに慣れやすいとされています。
■ 演奏環境でできる工夫
▼ 照明を見直す
手元がしっかり見える明るさを確保することも、見えにくさの軽減につながります。譜面台用のスポットライトなど、手元を照らす照明を取り入れるのも一つの方法です。
▼ 目を休めながら練習する
長時間近くを見続けることは、目の疲れにつながります。適度に休憩を挟み、遠くを見る時間を作ることで、目の負担を軽減できます。1時間に一度は休憩を挟んで遠くを見る、という習慣は、目の健康を保つ上で一般的に推奨されています。
▼ TAB譜やコード表を拡大表示する
スマートフォンやタブレットでコード譜を見る場合、文字サイズを拡大表示できる機能を活用すると、見やすさが改善されることがあります(過去記事「U-FRETの使い方」も参考にしてください)。
■ 眼科・眼鏡専門店への相談を大切に
見えにくさが日常生活に支障を感じるほどであれば、無理をせず、専門家に相談することが大切です。眼科医による診察では、老眼以外の目の不調が隠れていないかも確認してもらえます。
眼鏡専門店では、視力測定に加えて、ライフスタイルや用途に合わせたレンズの相談に乗ってもらえます。「ギターの演奏で使いたい」という具体的な用途を伝えることで、より適したメガネを提案してもらえる可能性があります。
■ 50代がこの悩みと向き合う際の心構え
▼ 見えにくさは自然な変化であり、恥ずかしいことではない
老眼は、誰にでも起こりうる自然な加齢現象です。見えにくさを感じることは、決して特別なことでも、恥ずかしいことでもありません。
▼ 適切な対処で、演奏の質を保てる
適切なメガネや環境の工夫によって、見えにくさによる演奏へのストレスは、大きく軽減できる可能性があります。無理に我慢し続ける必要はありません。
▼ 焦らず、自分に合った方法を見つける
メガネのタイプ、演奏環境の工夫など、試せる方法はいくつかあります。一つずつ試しながら、自分にとって最も演奏しやすい方法を見つけていくことをおすすめします。
■ まとめ:老眼による見えにくさへの対処法
| 対処法 | 内容 |
|---|---|
| 演奏距離に合わせたメガネ | ギターを構えた状態での距離を測って作成する |
| 遠近・中近両用メガネ | 複数の距離をカバーしたい場合の選択肢 |
| 演奏環境の工夫 | 照明を見直す・楽譜を拡大表示する |
| 目の休憩 | 長時間近くを見続けず、適度に休憩を挟む |
| 専門家への相談 | 眼科・眼鏡専門店で用途を伝えて相談する |
老眼による見えにくさは、50代のギター再開者にとって、決して珍しい悩みではありません。適切な対処法を知り、無理なく演奏を楽しめる環境を整えていきましょう。
■ 演奏環境の悩みをプロに相談したい方へ
見えにくさを含めた演奏環境の工夫については、オンラインレッスンでプロに相談してみるのも一つの方法です。


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