「録音するといいと聞いて録ってみたが、下手だと感じただけで終わった」——これは非常によくある反応です。
録音は上達に効く方法ですが、聴き方を知らないと「落ち込む装置」になってしまいます。何を聴くかが決まっていないと、全体の印象だけが残るからです。
この記事では、録音を聴き返すときに何を確認すればいいのかを整理します。
■ まず:全体の印象で判断しない
録音を聴いて最初に感じるのは、たいてい「思ったより下手だ」という感想です。
これには理由があります。弾いている最中、自分の耳は骨伝導も含めて音を聴いており、実際に外に出ている音とは違って聞こえます。加えて、演奏中は指の動きに意識が向いているため、音の細部を聴けていません。
つまり、録音で聞こえる音のほうが実際の音です。落ち込む必要はなく、「これが現在地」と受け止めるところから始まります。
そして重要なのは、全体の印象ではなく、項目ごとに確認することです。
■ 確認する5つの項目
▼ ① テンポは一定か
最も分かりやすい項目です。
・途中で速くなっていないか
・難所の前で遅くなっていないか
・曲の最後が最初より速くなっていないか
多くの場合、決まった箇所で崩れます。その位置を特定してください。
▼ ② 音は全部鳴っているか
コードを押さえたとき、鳴っていない弦があるかどうかを聴きます。
弾いている最中は「鳴ったつもり」になりがちです。特にバレーコードでは、1〜2本鳴っていないことがよくあります。
▼ ③ 音量は揃っているか
・強く弾いた音と弱い音の差が大きすぎないか
・特定の弦だけ音量が小さくないか
・サビとAメロで意図した差がついているか
意図せずばらついているのか、意図してつけた強弱なのかを区別してください。
▼ ④ 音の長さは揃っているか
見落とされやすい項目です。
・伸ばすべき音が途中で切れていないか
・切るべき音が伸びていないか
・コードチェンジの瞬間に音が途切れていないか
音の切れ目は、リズムの印象を大きく左右します。
▼ ⑤ 止まった箇所はどこか
止まった、あるいはもたついた箇所を書き出してください。これが次の練習の課題リストになります。
▶ リズムがずれる原因と直し方
▶ 弾いた音が外れて聞こえるときに確認すること
■ 聴き方の手順
▼ ステップ1:1回目は何も考えずに通して聴く
まず全体を聴きます。この段階では評価しません。
▼ ステップ2:2回目以降は1項目ずつ聴く
テンポだけに注目して1回、音の鳴りだけに注目して1回、というように、1つの項目に絞って聴きます。
複数を同時に聴こうとすると、結局「なんとなく下手」という印象しか残りません。
▼ ステップ3:気になった箇所の時間をメモする
「0:45あたりで遅くなる」「1:20でコードが濁る」といった形で記録します。
▼ ステップ4:その箇所だけを練習する
曲全体を弾き直すのではなく、メモした箇所だけを取り出して練習します。これが録音を使う最大の目的です。
■ 定点観測用の録音を持つ
上達を確認するための録音は、練習用とは別に用意してください。
▼ 毎回同じものを録る
・簡単な運指練習
・コードチェンジの練習
・弾き慣れた曲の一部
曲は変わっていくので、変わらないものを1つ決めておくと、長期の比較ができます。
▼ 月に一度でいい
毎日録ると負担になり続きません。月1回、決まった日に録るだけで十分です。
▼ 半年後に聴き比べる
これが最も効く瞬間です。半年前の録音を聴くと、多くの人が変化に驚きます。
「上達している実感がない」という悩みの大半は、この比較で解決します。
■ 落ち込まないための3つの約束
▼ ① 他人の演奏と比べない
比較対象は先月の自分だけです。動画サイトの上手い演奏と比べても、何も改善しません。
▼ ② 良かった箇所も1つ書く
課題だけを書き出すと、聴き返すのが嫌になります。「ここは前より良くなった」を必ず1つ探してください。
▼ ③ 疲れているときに聴かない
疲労していると、判断が厳しくなります。録音の確認は、頭がすっきりしている時間に行ってください。
■ 50代の再開者に特に効く理由
▼ 客観視ができる
自分の演奏を第三者の視点で聴くのは、経験のある年代のほうが得意です。感情的にならず、事実として受け止められます。
▼ 独学の弱点を補える
独学で最も難しいのは、自分の演奏を評価することです。録音は、レッスンを受けていない人にとって最も現実的な自己評価の手段になります。
▼ 記録が積み上がる
数年分の録音が残ると、それ自体が財産になります。当時の自分がどう弾いていたかは、あとから聴くと味わい深いものです。
■ まとめ
| 確認項目 | 聴くポイント |
|---|---|
| テンポ | 一定か、どこで崩れるか |
| 音の鳴り | 鳴っていない弦はないか |
| 音量 | 揃っているか、意図した差か |
| 音の長さ | 切れすぎ・伸ばしすぎがないか |
| 止まった箇所 | 位置を記録して課題にする |
「下手だった」で終わらせず、項目ごとに聴く。それだけで録音は、落ち込む装置から上達の道具に変わります。


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