「一人で弾いているときは気にならないのに、伴奏に合わせると必ずずれる」「メトロノームに合わせると、途中から離れていく」——ある程度弾けるようになると、この問題が見えてきます。
リズムのずれには2種類あります。速くなる「走る」と、遅れる「もたる」です。原因も対処法も異なるので、まずどちらなのかを特定することから始めます。
■ 走る・もたるとは
▼ 走る(速くなる)
テンポより先に音が出てしまう状態です。多くの場合、無自覚に起きています。
▼ もたる(遅れる)
テンポより後ろに音が出る状態です。演奏が重く、締まりのない印象になります。
▼ どちらか分からない場合
メトロノームに合わせて弾き、録音して聴き返してください。メトロノームの音と自分の音のどちらが先に鳴っているかで判別できます。
■ 走る原因と対処
▼ 原因① 緊張・力み
体に力が入ると、動作が速くなります。人前で弾くとき、録音するときに顕著に出ます。
対処:肩の力を抜く、弾く前に深く息を吐く。呼吸が止まっていないか確認してください。
▼ 原因② 簡単な部分で加速する
弾き慣れた箇所は指がスムーズに動くため、無意識に速くなります。難所の後に易しい部分が来ると、反動でさらに加速します。
対処:曲の中で速くなる箇所を特定してください。多くの場合、決まった場所で起きています。
▼ 原因③ 音を短く切りすぎている
音の長さが足りないと、次の音が早く来ます。1音1音を最後まで伸ばす意識で弾くと、自然に落ち着きます。
▼ 原因④ 早く終わらせたい気持ち
難しい箇所を「早く抜けたい」と感じると、そこだけテンポが上がります。これは意識で修正できる部分です。
■ もたる原因と対処
▼ 原因① 準備が間に合っていない
次のコードやフレーズの準備ができていないため、音を出すのが遅れます。
対処:現在の音を弾きながら、次の指の形を作る練習をしてください。ゆっくりしたテンポで「弾く→次の準備」を分解します。
▼ 原因② 押さえるのに時間がかかっている
弦高が高い、押さえる力が強すぎるなど、物理的に時間がかかっている可能性があります。
対処:楽器のセッティングを確認してください。技術ではなく楽器が原因のことがあります。
▼ 原因③ 音を確認してから次に進んでいる
「今の音、合っていたか」と確認しながら弾くと、常に遅れます。
対処:ミスしても止まらず、次に進む練習をしてください。確認は録音で行います。
▼ 原因④ テンポが速すぎる
そもそも今の実力に対して速すぎる場合、追いつけずに遅れます。テンポを落として、余裕を持って弾ける速さから始めてください。
▶「押さえにくい」の原因は弦高かもしれません
▶ 速く弾けないのは、ゆっくり弾けていないから
■ 特定するための練習
▼ ステップ1:メトロノームを4分音符で鳴らす
まず基本のテンポを体に入れます。手拍子でもいいので、音を出さずに合わせてみてください。
▼ ステップ2:メトロノームを2拍目・4拍目だけに鳴らす
これが最も効果的な練習です。1拍目と3拍目に頼れなくなるため、自分のテンポ感が試されます。
最初はうまく合いませんが、これができるとリズムは安定します。
▼ ステップ3:メトロノームを2小節に1回だけ鳴らす
さらに難易度が上がります。鳴らない間に自分でテンポを保つ必要があるため、走る・もたるが明確に分かります。
▼ ステップ4:伴奏音源に合わせる
ドラムとベースが入った音源に合わせて弾きます。実際の演奏に最も近い状態です。
■ 録音が唯一の確認手段
弾いている最中は、自分がずれていることに気づけません。これは技術の問題ではなく、演奏中の意識が指に向いているためです。
・メトロノームと一緒に録音する
・聴き返して、どこでずれたかを特定する
・その箇所だけを取り出して練習する
月に一度でもこれを行うと、自分の癖が分かってきます。走る人はいつも走り、もたる人はいつももたる、という傾向があります。
■ 50代の再開者が意識したいこと
▼ リズムは年齢の影響が小さい
速く指を動かす能力は年齢の影響を受けますが、テンポを保つ能力はそうではありません。むしろ、落ち着いて一定を保つという点では、経験のある年代のほうが有利です。
▼ 焦らないことが直接効く
走る原因の多くは焦りです。「早く弾けるようになりたい」という気持ちが、そのままテンポに出ます。
▼ 疲れると崩れる
集中力が落ちるとリズムは崩れます。30分弾いて崩れてきたら、そこで区切ってください。崩れた状態で続けると、その状態が定着します。
■ まとめ
| 症状 | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 走る | 緊張・力み | 肩の力を抜く、息を吐く |
| 走る | 易しい部分で加速 | 加速する箇所を特定 |
| もたる | 次の準備が遅い | 弾きながら次の形を作る |
| もたる | 押さえに時間がかかる | 楽器のセッティング確認 |
| 共通 | テンポが速すぎる | 落として余裕を作る |
最も効果的な練習は、メトロノームを2拍目と4拍目だけに鳴らすことです。まずはこれを試してみてください。


コメント