ギターを再開して半年が過ぎたころ、ふと気づいたことがありました。「若い頃のようには指が動かない」という現実です。
8年のブランクを経て再開した当初、心の中では「以前くらいには戻れるはず」という期待がありました。しかし実際には、思うように動かない指、すぐに疲れる右手、若い頃より時間がかかる暗記——これらの現実に向き合うことになりました。
この記事では、50代でギターを再開した私が「加齢との向き合い方」について感じたことを、リアルな体験談としてお伝えします。
■ 加齢を実感した瞬間
50代の年齢になると、若い人と比べて劣ることがあります。具体的には、指が思うように動かない、せっかく覚えた弾き方を忘れてしまうなどです。
私自身も、複雑なコード進行を覚えても数日後には忘れてしまっていることに気づき、最初は少し落胆しました。「若い頃ならもっとすぐ覚えられたはず」という比較が、自分を苦しめていた時期がありました。
長時間ギターを弾いていると右手の疲れや痛みを感じることも増えました。これは50を超えるあたりから多くのギタリストが感じる変化だと、後に知ることになります。
■ 「持ち物の違い」を整理してみた
ある時、若い頃の自分と今の自分の「持ち物」の違いを整理してみました。
若い自分が持っていたものは、若さ・体力・指の動きの速さ・新しい発想・素直さなどでした。同時に「不安・無知・経済的な余裕のなさ」といった負の要素も持っていました。
一方、50代の自分には体力や指の速さはないものの、社会経験による知恵があり、ある程度経済的に安定しています。音楽をやる上では、これらの持ち物の重要度を天秤にかけたら、どちらも同じくらいの価値があるのではないかと思うようになりました。
■ 「流動性知性」と「結晶性知性」という視点
人間の知性には「流動性知性」と「結晶性知性」という2つの側面があります。
流動性知性は新しい情報を素早く処理する力で、年齢とともに低下していきます。一方、結晶性知性は知識や経験をもとに理解を深める力で、年齢を重ねるほどに豊かになります。
最初に弾く曲を、自分がよく知っているものや好きな曲にすると、結晶性知性を使って「あの部分はこういう風に弾くとしっくりくる」「このコードはこういう響きがある」というように理解が深まることに気づきました。長年聴いてきた音楽の蓄積が、若い頃にはなかった理解の深さを与えてくれたのです。
■ 加齢による変化への具体的な対処
▼ ① ストレッチとアイシングを習慣にした
激しい演奏をした後に右手の症状が悪化することに気づき、準備運動(ストレッチ)と演奏後のアイシングを始めました。完全にではないですが、症状がずいぶん改善することがわかりました。休養日を設けることも効果的でした。
▼ ② 「忘れること」を前提にした練習に変えた
覚えたことを忘れてしまうのは当然のことだと受け入れ、何度も繰り返し復習する習慣に変えました。一度で完璧に覚えようとするのではなく、「忘れて、また覚える」サイクルを前提にすることで、焦りが減りました。
▼ ③ 過去の自分との比較に切り替えた
学び始めた時点の自分と、1ヶ月後、3ヶ月後の自分を動画で比較してみるようにしました。少しずつ上達している実感が得られることで、モチベーションが上がりやすくなりました。若い頃の自分と比べるのではなく、「先月の自分」と比べる視点に変えたことが大きな転換点でした。
▼ ④ 体全体のケアを始めた
肩こりや首のこりも、ギターを始めてから以前より気になるようになりました。ストレッチを日課に取り入れることで、長年ひどかった肩こりが解消し、目に見えて体調が良くなったという話も多く聞きます。私自身もジムでのストレッチを取り入れることで、演奏中の体の負担が軽くなった実感があります。
■ 50代だからこそ得られた強み
加齢による能力の衰えという肉体的なデメリットよりも、継続力や忍耐力という精神力の強さが、ギター習得には大きなメリットになると感じています。
若い人は初めは集中して取り組むものの、すぐに飽きてしまうことがあります。しかし年齢を重ねた人は、日々の暮らしを支えるために仕事や家事を続けてきた経験から、地道な作業を続ける能力が高いという特徴があります。
50代から始めても、目標設定と毎日の練習という基本を大切にすれば、上達に年齢は関係ないということを、自分自身の経験を通じて確信するようになりました。
■ 「維持」という視点の大切さ
ギターのみならず楽器演奏は、身体のトレーニングと同じです。筋トレして急にマッチョにならないのと同じで、急にギターが上手くなったりはしません。ちょっとずつ年月をかけていつの間にか上手くなっているのが楽器の特徴です。
加齢とともに「上達」だけを目指すのではなく、「維持」を楽しむという視点に切り替えたことで、ギターとの向き合い方が穏やかになりました。維持を楽しんでいると、いつの間にか以前よりも上達しているということもあります。
■ 加齢との向き合い方で大切にしている3つのこと
▼ ① できないことを受け入れる
指が思うように動かないこと、忘れやすくなったことを、ネガティブに捉えず「今の自分の現実」として受け入れることから始まります。
▼ ② できることに目を向ける
長年の人生経験から得た音楽への理解、忍耐力、継続する力——これらは50代だからこそ持っているものです。
▼ ③ 体のケアを練習の一部に組み込む
ストレッチ、アイシング、休養日の確保を、練習と同じくらい大切な習慣として取り入れるようになりました。
■ まとめ:加齢と向き合いながらギターを楽しむ
| 気づき | 向き合い方 |
|---|---|
| 指が思うように動かない | 流動性知性は維持できる、焦らず継続する |
| 覚えたことを忘れる | 結晶性知性を活かし、好きな曲・知っている曲で覚える |
| 右手の疲れ・痛み | ストレッチとアイシングを習慣化する |
| 若い頃と比較してしまう | 過去の自分(先月の自分)と比較する |
50代でギターを再開して感じたのは、「老化を否定する」のではなく「老化と共にできることを見つける」という姿勢の大切さでした。指の動きは若い頃に劣るかもしれませんが、音楽への理解と続ける力は、50代の今だからこそ持っている強みです。
加齢との向き合い方は、ギターだけでなく人生そのものへの向き合い方でもあるのかもしれません。これからも自分のペースで、ギターという楽しみを長く育てていきたいと思います。
■ 自分のペースでの上達をプロと一緒に確認したい方へ
体への負担を考慮した練習方法は、オンラインレッスンでプロに相談すると安心して取り組めます。


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