「スケールは覚えたのに、いざアドリブとなると手が止まる」「弾いてはいるが、ただ音を並べているだけに聞こえる」——アドリブに取り組み始めた方が、最初に感じる壁です。
原因は、スケールの知識不足ではありません。スケールは「使える音の範囲」を示すだけで、何を弾くかは教えてくれないからです。
この記事では、アドリブで何を弾くかの考え方を整理します。
■ スケールを覚えても弾けない理由
▼ スケールは地図であって、道順ではない
Aマイナーペンタトニックを覚えると、「この5音を使えば外れない」ことは分かります。しかし、その5音をどう並べるかは別の問題です。
地図を持っていても、どこへ行くかを決めていなければ動けません。アドリブで手が止まるのは、この状態です。
▼ 音を「外さないこと」が目的になっている
間違えないことに意識が向くと、スケールを機械的に上下するだけの演奏になります。外れていないが、音楽になっていない状態です。
■ 発想の転換:フレーズを話し言葉として捉える
アドリブは、会話に似ています。
・単語(音)を並べただけでは意味が通じない
・短い文(フレーズ)にまとめると意味が生まれる
・文と文の間に「間」があると聞き取りやすい
多くの人が、単語を延々と並べ続けています。まず、短い文を作ることから始めてください。
■ 実践その1:2小節だけ弾いて、2小節休む
最初に取り組むべきはこれです。
・2小節だけ何か弾く
・次の2小節は完全に休む
・これを繰り返す
休むことに抵抗を感じるかもしれませんが、間があるほうがフレーズは印象に残ります。埋め尽くされた演奏は、聞いている側には情報が多すぎて記憶に残りません。
しかも、休んでいる間に「次に何を弾くか」を考えられます。ずっと弾いていると、考える余裕がありません。
■ 実践その2:3〜5音で1フレーズを作る
短い音数で1つのまとまりを作ります。
・3音でも成立する
・同じ音を繰り返しても構わない
・最後の音を長めに伸ばすと、まとまりが出る
「音数が少ないと物足りないのでは」と思われがちですが、逆です。少ない音数のフレーズのほうが、聴き手には残ります。
■ 実践その3:同じフレーズを2回繰り返す
作ったフレーズを、そのまま2回繰り返してみてください。
・1回目:フレーズを提示する
・2回目:聴き手が「またこれだ」と認識する
これだけで、即興が「意図のある演奏」に聞こえます。ブルースやロックの名演には、この繰り返しが非常に多く使われています。
さらに、3回目で少しだけ変える(最後の音を変える、1音足す)と、展開が生まれます。
■ 実践その4:目標の音を決めてから弾く
「どこへ向かうか」を決めておくと、途中の音が自然に決まります。
・コードが変わる瞬間に、その和音の構成音に着地する
・小節の頭でルート音を鳴らす
着地点さえ決まっていれば、そこまでの道のりは自由に選べます。これが「音を並べる」から「フレーズを弾く」への転換点です。
■ 実践その5:好きなフレーズを覚えて使う
ゼロから生み出す必要はありません。プロも、覚えたフレーズの組み合わせで演奏しています。
・好きなソロから2〜4小節を切り出して覚える
・それを別の曲で使ってみる
・少しずつ変形させる
こうして覚えたフレーズの引き出しが増えると、アドリブの選択肢が増えます。5個も持っていれば、組み合わせでかなりのことができます。
▶ ギターソロが覚えられないときの手順
▶ ギター初心者の耳コピ入門
■ 50代の再開者が有利な点
▼ 「歌える」感覚がある
長年音楽を聴いてきた蓄積があるため、良いフレーズとそうでないものの判断がつきます。この耳は、若い頃には持っていなかったものです。
▼ 速く弾く必要がない
アドリブ=速弾きではありません。むしろ、少ない音数で間を活かす演奏は、落ち着きのある年代のほうが向いています。
▼ 引き算ができる
若い頃は、覚えたことを全部使いたくなります。何を弾かないかを選べるのは、経験の効く部分です。
■ 練習の進め方
▼ 伴奏音源を使う
ドラムとベースが入った音源に合わせて弾いてください。1人で弾くと、リズムの基準がなく、フレーズの位置が定まりません。
▼ 録音して聴き返す
弾いている最中は、自分が何を弾いたか正確には覚えていません。録って聴くと、「同じフレーズばかり」「休みがない」といった傾向が見えます。
▼ 1つのスケール、1つのキーで続ける
複数のキーやスケールに手を広げず、まずはAマイナーペンタトニック1つで数ヶ月続けてください。使える音を熟知しているほうが、フレーズを作ることに集中できます。
■ まとめ
| 実践 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 2小節弾いて2小節休む |
| 2 | 3〜5音で1フレーズを作る |
| 3 | 同じフレーズを2回繰り返す |
| 4 | 着地点を決めてから弾く |
| 5 | 好きなフレーズを覚えて使う |
| 練習 | 伴奏音源+録音、1つのスケールで続ける |
アドリブは、音を埋めることではありません。まずは2小節弾いて、2小節休むところから試してみてください。


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